理化学研究所 広視野望遠鏡とレーザーによるスペースデブリ除去システムを提案 ISS実証へ

スペースデブリ検出用のEUSO型超広角望遠鏡とレーザー射出用光学系。 画像提供:理化学研究所

2015年4月21日、理化学研究所は、超広角望遠鏡とファイバーレーザーとを組み合わせ、軌道上からスペースデブリを除去するシステムの提案を行ったと発表した。ISS(国際宇宙ステーション)での試験機実証を経て、高度800kmの軌道上で稼働するデブリ除去専用衛星の実現を目指す。

人工衛星を打ち上げた際のロケット上段の残骸や、運用を終えて軌道上に残っている衛星、それらが衝突した後の破片など、宇宙活動から生まれたスペースデブリの数は増加を続けている。ISSがスペースデブリを回避するため行ったエンジン噴射の回数は2011年まで1、2回だったものが、2014年には5回となっている。昨年10月には、2009年に機能停止中のロシアの軍事通信衛星コスモス2251号と、米イリジウム社の通信衛星イリジウム33号とが衝突して発生したデブリの回避行動も行われた。

2014年末の時点で、アメリカのスペース・サベイランス・ネットワークがカタログ化して監視対象としている1辺が10cm以上のスペースデブリは、ロケット残骸や破片が1万3025個、衛星などが3881個、合計で16906個となっている。追跡監視が困難なセンチメートル級の小さな破片などは、大きなデブリの周囲に雲のように付随して軌道を周回しているとみられ、すべて合わせると数十万個、3000トン以上の量になるとの推計がある。カタログ化された大きなスペースデブリを除去するシステムは、JAXA 宇宙航空研究開発機構が進める導電性テザーを取り付ける方法などが検討されているが、センチメートル級デブリの除去についてはこれまで有効なものがなかった。

理化学研究所の戎崎計算宇宙物理研究室 戎崎俊一博士らを中心とする研究チームは、『EUSO』望遠鏡と呼ばれる高エネルギー宇宙線を検出する超広角望遠鏡を利用し、高速で軌道を周回するスペースデブリを検出する手法を考案した。EUSO望遠鏡では、100kmの距離にある0.5㎝の大きさのスペースデブリから反射する太陽光を検出できる感度を持っているという。望遠鏡で大まかなデブリの位置、速度を決め、レーザー測距技術により正確な位置と速度をを求めることができる。

発見したスペースデブリに、『CAN』と呼ばれるファイバーレーザーシステムを組み合わせ、1cm程度のサイズのデブリ片にレーザーを照射して一部をプラズマ化、溶発させる。その反作用でデブリは速度を落とし、高度が下がって大気圏に再突入し燃え尽きるという仕組みだ。平均パワーが500キロワット、パルス幅約1ナノ秒のレーザービームをスペースデブリに照射すれば、100㎞以上離れた場所から10秒程度の照射で10cmサイズのスペースデブリを減速して大気圏へ再突入させることができるという。

研究チームは、まず口径20cmとなるEUSO望遠鏡とファイバー100本の小型実証用システムをISS上に運んで実証を開始することを検討している。さらに、口径2.5mのEUSO望遠鏡とファイバー1万本のレーザーシステムから構成されるフルスケール版は、2017年に日本のISS補給船「こうのとり(HTV)」で国際宇宙ステーションに輸送され、実験を開始する予定だ。フルスケール版では、ISSから100km以内の範囲のスペースデブリを除去できるという。このシステムを応用し、将来はスペースデブリが集中している高度700~800kmの極軌道で機能するスペースデブリ除去専用衛星を実現させたい考えだ。

センチメーター級のスペースデブリに地上からレーザーを照射し、速度を落として除去するには、大気のゆらぎの問題を解消するための補償光学の技術などが必要だった。宇宙からのシステムであれば、より精密に、かつ低コストでのデブリ除去が可能だ。スペースデブリ除去専用衛星は数分に1回、近づいてくるデブリを除去することが可能で、5年以内にセンチメートル級のスペースデブリをほとんど除去できるようになるという。

執筆者:秋山文野